Shouting Fire in a Crowded Theater

日々のあれこれ

経済

「市場の失敗」から「市場の難問」へ

前々回の記事で紹介した『ボランタリー・シティ』。エピローグで編者の1人であるアレクサンダー・タバロックは、一般的な経済学の議論、特に「公共財」と「外部性」に関する主張に改めて疑問を投げかける。(理論上)市場では供給が不可能か不十分にしかでき…

ボランタリー・シティ 

今回は、以前みんなの党を取り上げた際にも言及した、デイヴィド・ベイト、ピーター・ゴードン、アレクサンダー・タバロック編著『ボランタリー・シティ 選択・コミュニティ・市民社会』を紹介してみたい。まず、本書の内容を一言で表すならば、政府の役割を…

「高等遊民」という生き方 

以前からよく拝見しているブログの1つに「高等遊民の備忘録」がある。作者の遊民さんは、会社員生活をリタイアして第二の人生を歩き始めた40代無業者だという。資産運用の考え方や政府の介入に対する反対、そして何よりもその労働観等共感できる内容の記事…

アマゾン・ドット・コム 

山形浩生氏によるとアマゾン・ドット・コムの強みは物流にあるという(「解説 アマゾン・コムから学ぶべきこと」)。 アマゾン・コムは物流業であるということ。実はアマゾンをはじめとする大規模オンライン小売り業のいちばんの秘密は、その物流にある。web…

障害者雇用を考える

5月10日の日経新聞「経済教室」欄で、慶應大学の中島隆信氏が「社会的弱者」の雇用問題について論じている。特に取り上げられているのが、障害者の問題だ。かれはまず、次のような事実を指摘する。行政は、障害者福祉施設運営のために年間8,000億円近い支出…

バウチャー・プラン:リバタリアン・ディベート

Knight Libertyさんのブログ「自由の騎士が行く」で「教育バウチャーと選擇の不自由」と題して計3回にわたり「教育バウチャー」について論じられている。(第2回「教育バウチャーと選擇の不自由(續)」、第3回 「教育バウチャーと選擇の不自由(續々)」。…

肩をすくめたアラン

以前 『ラディカル・リバタリアニズム』の著者として言及したことがあるジェローム・トゥッチーレだが、かれは『肩をすくめたアラン』という前FRB議長のアラン・グリーンスパンに関する本も書いているようだ。まず、タイトルが面白い。もちろんアイン・ラン…

国家は,いらない

アメリカではリバタリアンを自任する経済学者は数多いが、日本では余り見ることができない。どちらかという基礎法学関係の研究者(森村氏、アスキュー、橋本氏等)のほうが多いようだ。しかし、経済学がリバタリアニズムの強力な理論的バックボーンとなって…

リバタリアンからみた労働組合

今日は暇だったので、久しぶりにミルトン・フリードマンの『選択の自由[新装版]―自立社会への挑戦』を読み返してみた。読むたびに新しい発見があるが、今回取り上げたいのは「労働組合」について。フリードマンは、一般的に労働者を「保護する」ものと考えら…

メガバンクの内側

たまにはリバタリアンの話題から離れて。4月も後半になり、来年入社予定の学生の就職活動も終盤になってきたのではないだろうか。金融系はほぼ内定を出し終わり、メーカーその他も今から連休明けくらいが内定ラッシュといったところか。ぼくも何年か前(2006…

先輩社員として考えたこと@就職セミナー

今は2011年に卒業する学生の就職活動がピークの時期なのだろう。街でリクルートスーツ姿と思しき若者を見る機会が多くなった。2010年卒の内定率が過去最悪の傾向を示す中、新卒採用を偏重する日本型雇用慣行の弊害があちこちで叫ばれている。とはいえ、個々…

不動産ファンド入門

脇本和也『最新 不動産ファンドがよ〜くわかる本』。証券化、流動化といった不動産金融の分野を知る上で良い本だ。同分野は、現在低迷しきっているが、そのうち(ある程度は)復活するだろうから一定の知識は備えておきたい。普通,証券化の本はスキームの解…

今は無き最強のヘッジファンド「ロングターム・キャピタル・マネージメント」

ロジャー・ローウェンスタイン『最強ヘッジファンド LTCMの興亡』を読んだ。タイトルのとおり、1998年に破綻したロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の栄光と転落の軌跡を描いたノンフィクションだ。元ソロモン・ブラザーズの「伝説のトレーダー…

擁護できないものを擁護する

ウォルター・ブロックの『擁護できないものを擁護する(原題:DEFENDING THE UNDEFENDABLE)』。オーストリア学派の経済学者で著名なアナルコ・キャピタリストであるブロックの代表作だ。2006年に金融作家である橘玲氏の手によって『不道徳教育』なるタイト…

海外ニートの逆襲

今最も注目されているブログの1つは「ニートの海外就職日記」だろう。存在を見つけたのは偶然だったが、過去のエントリも含めて一気に読んでしまった。作者の海外ニートさんは、大学卒業後パチプロ、オーストラリアへの留学を経て現在シンガポールの外資系…

インセンティブを理解する

今回はタイラー・コーエン(Tyler Cowen)の『インセンティブ 自分と世界をうまく動かす』を紹介したい。著者のコーエンは、ジョージ・メイソン大学の経済学教授。人気経済ブログ「Marginal Revolution」の運営者として一般にも知名度が高い。コーエンのweb…

法と経済学 についてのメモ

以下の文章は、学生時代「法と経済学」について調べていた際の備忘録的なものだ。今読んでも内容的にはそれほどおかしいところはないと思っているので、改めて載せておくことにしたい。法と経済学(Law and Economics)あるいは法の経済分析(Economic Analy…

本当のゴールドマン・サックス

ここ何回か投資銀行からみの記事を書いているが、その関連で面白いブログを見つけた。「kikulog」。経済ジャーナリストの菊池雅志氏が様々な雑誌媒体で発表した取材記事を載せているもののようだ。特に興味深く読ませてもらった記事が「外資系投資銀行の虚像…

金融志望者は『ライアーズ・ポーカー』を読みましょう

前々回の記事で末永徹氏の『メイク・マネー』について書いたが、投資銀行、それもソロモン・ブラザーズに関する本を続けて読んだ。マイケル・ルイスの『ライアーズ・ポーカー』だ。もともとは、橘玲氏の『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』のなかでトム・…

メイク・マネー!

末永徹『メイク・マネー! 私は米国投資銀行のトレーダーだった』を読んだ。著者の末永氏は、東京大学法学部を卒業し、国家公務員上級試験に合格していながら、米国の投資銀行ソロモン・ブラザーズ(現在はシティグループの一部門)に入社し、主に株式関連の…

そろそろ民主主義をやめましょう: カプラン『選挙の経済学』紹介

今回は、昨年邦訳が出版されたブライアン・カプランの『選挙の経済学』を取り上げてみたい。原題は"The Myth of the Rational Voter"。カプランはここで従来の公共選択論(経済学の手法を政治的領域に適用するもの)の想定している投票者に対する「合理的無…

もっとセックスしよう!

最近スティーヴン・ランズバーグの『ランズバーグ先生の型破りな知恵 常識を転倒させる実証経済学』を読んだ。ランズバーグの本の翻訳としては『ランチタイムの経済学』、『フェアプレイの経済学』に続く3冊目になる。 原著の"MORE SEX IS SAFER SEX"という…

公共財:この如何わしいもの

国家を正当化する理由として「公共財」や「市場の失敗」の存在があげられることが多い。だが,リバタリアンは断固としてこうした主張を退ける。例えばフレッド・フォールドベリーは,『公共財とプライベート・コミュニティ』のなかで,「市場の失敗」といっ…

アダム・スミス をめぐる論争

D・フリードマンによるロスバードの『アダム・スミス以前の経済思想』にたいする批判。ちょうど森村進編著『リバタリアニズム読本』の『国富論』を取り上げた箇所でこの本が取り上げられていたので,引用しておく。解説は森村進さんが書いている。 『国富論…

ゲーム理論の読みものとして面白い:『もっとも美しい数学』

夏の休暇中、こちらで紹介されていたトム・ジークフリード『もっとも美しい数学 ゲーム理論』を読んだ。現在のゲーム理論研究が生物学、人類学や物理学といった諸科学分野とどのようにつながるつつあるのかを各研究者へのインタビューを中心に描いていてなか…

ゲーリー・ベッカー講演会でやはり一橋大学は優秀だと確信した

学生時代,一橋大学にゲーリー・ベッカーの講演を聴きに行ったことがある。ベッカーは,家族,差別,犯罪などの広範な社会問題に経済学の分析手法を適用した経済学者。いわゆる「経済学帝国主義」の代表として知られ,ノーベル経済学賞も受賞している。日本…

左派からの青木昌彦氏批判:『日本企業 理論と現実』

日経新聞の「私の履歴書」は、たいがいリタイアした経営者の自慢話でつまらないことが多いが、以前連載していた経済学者の青木昌彦氏のものは面白かった。『人生越境ゲーム―私の履歴書』というタイトルで単行本化もされているようだ。彼の自伝的作品ではエッ…

「市場の失敗」に関するリバタリアンの考え

ウォルター・ブロックがスティーヴン・ランズバーグがオンラインマガジン『スレイト』で書いたコラム「所有は窃盗である」を批判している。直接的には車泥棒への対策をめぐる話だが、もちろん本質は「市場の失敗」をめぐる両者の見解の違いにある。ランズバ…

定期借家権を導入せよ!

『契約の時代』のなかで著者の内田貴は定期借家権の導入に慎重な姿勢を示している。稲葉振一郎氏は内田の議論に説得力を感じたと書いているが,ぼくはそうは思わなかった。内田は,バブル期にオフィス用の賃貸物件の供給が急増したことをあげて,借家法がも…

財政学と公共選択

ジェイムズ・ブキャナン,リチャード・マスグレイブ『財政学と公共選択―国家の役割をめぐる大激論』は,共にこの分野(広義の「財政学」)の大物である両者の違いを知る上で便利な本だ。ドイツで行われたシンポジウムの記録を元にしているため比較的読みやす…