Shouting Fire in a Crowded Theater

日々のあれこれ

盗人に追い銭:TPP議論を嗤う

初出はLJP。農家は「被害者」ではなくむしろ「加害者」である、という視点から書いた。最初ランズバーグの議論を読んだときはかなり驚いたが、よく考えると反論が困難なことがわかる。実現可能性はさておき、皆さんはどう考えられるだろうか。

TPPに関する議論が盛り上がっている。例えば、経済学者の高橋洋一氏。かれは、経済理論をふまえ自由貿易のメリットをわかりやすく解説し、TPP参加の重要性を説く(「TPPはなぜ日本にメリットがあるのか 誰も損をしない『貿易自由化の経済学』」)。と同時に、貿易自由化が国内生産者に「打撃」を与えることを考慮し、農家への所得保障制度を効果的に活用することで、TPP参加実現を図るべきとしている。おそらくほとんどの経済学者は高橋氏の議論に賛同するだろう。

いっぽう、「過激な」主張で知られる人気ブロガーの藤沢数希氏は、同様に自由貿易の利点を強調する。だが、上記の高橋氏とは異なり、農家への所得補償自体には反対している(「輸入関税を一方的にゼロにしても自国民は潤う」)。つまり、現状でも十分に優遇されている農家を「被害者」として扱うことをやめよう、というわけだ。その政治的実行可能性は別として、藤沢氏の議論に共感を覚える向きも多いだろう。

ところで、リバタリアンたるぼくは、こういった貿易自由化にまつわる議論を聞くたびに思い出す本がある。スティーヴン・ランズバーグ『フェアプレイの経済学』だ。ランズバーグは、第7章「おじいさんの誤謬―公平性について(その1)」で、NAFTA(北米自由貿易協定)が成立したときにマイケル・キンズリーが公平性と政治的配慮の観点から、アメリカ人労働者の損失が補償されるべきと主張していることを取り上げ、次のように論じる。

キンズリーは、政治的配慮という点では正しいかもしれないが、公平性の点では逆のことを言っているではないか。このアメリカ人労働者は、私たちが3ドル出せば買えるはずのものにずっと16ドルを請求しつづけていたのである。公平性の原則を掲げるのなら、これまで保護主義の利益を得ていた人たちのほうが、その負担を負ってきた国民の大多数にたいして補償すべきだろう。


公平性を求める情熱ならキンズリーに負けてはいないので、私もひとつの政策提言をしたい。NAFTAその他の自由貿易協定によって職を失ったアメリカ人労働者は、社会の寄生者であることがわかったからには、財産の一部をアメリカ財務省によって差し押さえられてしかるべきだ。これによる歳入は一般財源にまわせばよい。

ランズバーグは、保護主義は労働者に消費者を搾取させることであり、おぞましさの点で奴隷制度と等しいと断じる。貿易自由化によって労働者に補償することは、元奴隷所有者に補償することと同様というわけだ。

さて、ランズバーグにならい、今回のTPP議論にかんし、ひとつの政策提言をしてみたい。TPPによって廃業を余儀なくされた日本人農家は、社会の寄生者であることがわかったからには、財産の一部を日本こ財務省によって差し押さえられてしかるべきだ。これによる歳入は一般財源にまわせばよい。以上。リバタリアンは常に正義を追求する。

フェアプレイの経済学―正しいことと間違っていることの見わけ方

フェアプレイの経済学―正しいことと間違っていることの見わけ方

  • 作者: スティーヴン・E.ランズバーグ,Steven E. Landsburg,斎藤秀正
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 1998/05
  • メディア: 単行本
  • クリック: 14回
  • この商品を含むブログ (6件) を見る