Shouting Fire in a Crowded Theater

日々のあれこれ

国際社会とアナーキー

無政府主義の可能性をめぐる議論のなかでしばしば用いられるアナロジーに、国際関係は(世界政府が存在しないという意味で)アナーキーなのだから、国内政治においてもアナーキーの実現は可能だろう、というものがある。今回は、この点を批判的に考察したタイラー・コーエンの議論を紹介したい。

かれは、以前取り上げた「公共財としての法:アナーキーの経済学」のなかで、(無政府資本主義における)競争的な保護エージェンシーと各政府から成り立つ今日の国際社会の相違点を指摘している。この論文のコーエンの主張は、無政府資本主義で想定する私的な保護エージェンシーは、共謀することによって強制的な政府に「進化する」だろうというものだ。したがって、以下の事項は、保護エージェンシーと政府の「共謀(collusion)」に対する態度の違いに焦点を当てていることを予めご留意いただきたい。

  • 保護エージェンシーは、利潤の最大化を望む株主によって所有されている。こうした株主は、成功した共謀を志向するはずだ。たいして、政府のインセンティブや動機はそれほど明らかではない。例えば、政府間の共謀が現職議員の再選を明白に増加させるだろうか。
  • 移民と貿易に関する制限は、市民と経済資源をめぐる国民国家間の競争に一定の歯止めをかける。競争が初めから限定されているため、共謀しようという意欲は弱くなる。たいして、私的な保護エージェンシーは、共謀しなければ、自らの顧客が他の企業へ流出することを食い止めることができない。顧客が契約先の企業を変えるコストは、非常に低いだろう。つまり、エージェンシーが顧客をロックインすることが困難なため、共謀の価値が非常に高いというわけだ。
  • 国際的な犯罪、法律にまつわる関係は、言うなれば、アメリカやカナダ政府の活動のごく一部を構成しているに過ぎない。カナダ人を殺害したアメリカ人へより効果的、効率的に対応するために世界政府を樹立するということの利益は、比較的小さい。たいして、私的保護エージェンシーの場合、エージェンシー間の刑法に関することがらは、かれらのビジネスのかなり大きな割合を占めるだろう。単一で包括的かつ共謀的な仲裁のネットワークを形成する利益は、相応に大きいと言えるはずだ。

Libertarianism: Past and Prospects (Cato Unbound Book 32007) (English Edition)

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