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日々のあれこれ

会社は2年で辞めていい?

前回、自身の転職の話しを書かせてもらった。転職活動中、参考にさせてもらった本が山崎元『会社は2年で辞めていい』だ。著書の山崎さんについては、改めて説明する必要はないだろう。長年のファンドマネージャーの経歴をもとに経済評論家として活躍されている。専門である資産運用に関する著作の他に、その転職歴(新卒で入社した三菱商事以後なんと12回!)をもとに、本書のようなビジネスキャリアについて著書も多い。本書もそうした系譜に位置づけることができる。

会社は2年で辞めていい (幻冬舎新書)

会社は2年で辞めていい (幻冬舎新書)

内容に移ろう。刺激的なタイトルから想像される通り、「(新卒後)3年で会社を辞める若者たち」にたいする世間のネガティブな見方に異議を唱えている。著者の就職に関するスタンスは、冒頭の次の文章に現れている。

就職に失敗があるのは当たり前だ。合わない会社だとわかったら、貴重な時間を無駄にせず、次の機会を試したほうがいい。

この考えは、ぼくも完全に賛同するものだ。世の中に山ほど会社があることを考慮すると、新卒時たまたま入社した先が自分にとってピッタリの場所だったというほうがむしろ異常だ。もちろん何がなんでも転職することが正しいというわけではない。しかし、(経済的な損得は別として)日本社会に根強い長期雇用への信奉は、根拠がないどころが誤った判断を助長する点で有害であるとさえ言える。

本書の前半部では、主に上記の考えに基づいた現代のキャリアプランや新卒時の会社の選び方が解説される。具体的な「転職のコツ」は、後半第五章で取り上げられている。転職活動を終えた今振り返ってみても、書かれている内容にはかねがね納得することができた。例えば「人間関係」で会社を辞めていいのかという問題。一般的にキャリアアップを理由とした転職は肯定的に扱われるが、人間関係(嫌な上司、同僚等)の理由とした転職は「逃げ」であるとして否定的に扱われる。だが、自分もそうであったように、転職のきっかけが人間関係に由来することは多いはずだ。著者は、人間関係は十分な転職理由になるとし、「現在」と「次」の職場を比べ、「次」の職場がベターであるならば転職を躊躇する必要はないと主張する。いまだに会社よりの仕事論が多い中、こうした働く個人の視点に立った見解は貴重だろう。

また、山崎さんが強調する「転職は猿の綱渡りである」、つまり次の会社が正式に決まる前に現職を辞めてはいけないという点は、ぼくも非常に重要だと思っている。逆に言えば、周囲に漏らさず内々に(これも著者が強調している点だ)活動する分には、よい職場が見つからなかったら今の仕事に留まればいいだけなので、ノーリスクかつハイリターンと言えるのではないだろうか。これが、いまのところ転職する気はない人間にも、ぼくが転職活動をしてみることをオススメする理由だ。

とはいえ、違和感を覚えた箇所がないわけではない。まず、全体を貫く(雇用に関する)やや楽観的なテイスト。これは、本書の出版が2007年12月という比較的雇用環境が良かった時期だっただけにやむを得ないのかもしれない。現状だと、当時持てはやされた「第二新卒」なる存在は、職務経歴が不足していることで敬遠される可能性のほうが高いというのがぼくの見立てだ。

それから、求職活動は就業時間中に行うべきはなく、都合がつかない場合は有給休暇を取ってから行うよう説いている点。山崎さんは(採用側が協力してくれて)夜や休日に面接してくれるケースが多いと書いているが、少なくともぼくの活動中、そのようなケースは1つもなかった。どれも日中(10時〜17時くらい)で調整する必要があるわけだ。有給休暇といっても、1社の面接回数が3回程度とし、5〜6社こなすだけでもけっこうな日数を休まなければならないだろう。ただでさえ休みが取りづらい日本企業のこと。病欠でもないのに有給を取りまくっていたら完全に怪しまれる、転職活動が会社にバレてしまう可能性が極めて高い。多くの潜在的転職希望者がなかなか活動に踏み切れないのも、じつはこのあたりの理由が大ききのではないかとぼくは睨んでいる。まあ、この問題についてどうすればいいか?と聞かれても、「うまくやるしかないよ」と答えるしかありませんがね・・・

山崎さんが書いている採用側が協力してくれるというのは、おそらく本人がエリートサラリーマンだからできたことだと推測している。たしかに日本社会ではアウトサイダー的な経歴なのかもしれないが、東大経済学部卒、渡り歩いた職場も外資系金融機関を始めとして高給かつ流動性の高い会社ばかりという点は、読む側に取っては注意しておく必要があるだろう。あと、退職の際は後任への「引継」をきっちり行うよう説いているが、これもケースバイケースだと思う。異業種への転職など、今後その会社と付き合う可能性が限りなく低いのなら、妙な義理立てはせずに有給休暇の完全取得なりに重点を置いたほうが、自分の人生にとってプラスのような気がする。まあこれも職業人である以上、はっきり書くことは難しいのかもしれないが。

いくつか疑問も書いてみたが、非常に役に立った本であることは間違いない。転職を考えている人は読んでおくと損はないと思います。